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パンの耳からビールつくり、食品ロスの削減に挑戦

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左から生江氏、中村氏、佐藤氏、小林氏

食品ロス削減の新しい取り組みとして、パンの耳を原料の一部に使用したビール、その名も「bread beer」が登場した。英国や米国では事例があるが、日本では初の試みという。製造元は長野のクラフトビール醸造所「AJBブルワリー」。原料のパンの耳を提供するのは、六本木の「ブリコラージュ」で、昨年「アジアのベストレストラン50」でサスティナブルレストラン賞を受賞した「レフェルヴェソンス」のオーナーシェフ・生江史伸氏が経営する店だ。一体どのような経緯で、“パンのビール”は生まれたのだろうか。(いからし ひろき)

白いラベルは“ゼロからスタート”を象徴

「bread beer」プロジェクトの発起人は、“ゴミを出さない経済循環”を提案するコミュニティ「530week」共催者の中村元気氏。14日に行われたリリースパーティでは完成したばかりのビールで乾杯した後、早速中村氏から今回の経緯が語られた。

「昨年の夏過ぎに、ブリコラージュ(bricolage bread &co.)のパンを食べて、“美味しい!”と感動したのがきっかけ。以前から海外では廃棄されたパンでつくられたビールがあることは知っていましたが、このパンなら日本でも美味しいビールがつくれると思ったんです」

一方、ブリコラージュの生江氏も、看板商品であるライ麦のカンパーニュ「ブリコラージュ・ブレッド」の“食品ロス”に頭を悩ませていた。併設するレストランでオープンサンドを提供するためにカットすると、どうしても余分な“耳“が出てしまうのだ。

「契約農家さんに肥料として引き取ってもらったり、ラスクにしたりと二次利用はしていましたが、もっとこのパンの美味しさを生かせるものが作れないか……と思っていたところ、元気くんが現れました」

中村氏が生江氏に紹介したのは、AJBブルワリー(Anglo Japanese Brewing Company)を英国人の夫、トーマス・リヴシー氏と共に営む絵美子氏。素材や生産者にこだわる両者はすぐ意気投合し、本邦初となる“パンのビール”作りプロジェクトが、2018年の11月にスタートした。

トークセッションで語る生江氏

トークセッションでは製造過程について詳しく説明。登壇者は生江氏と、愛息誕生のため急きょ来られなくなったリヴシー氏に代わり、同ブルワリーの佐藤孝洋氏と小林新吾氏。2人ともパンでビールをつくるのは初めて。「毎回仕上がりが違う。ああこうなるんだと、試行錯誤の連続でした」(佐藤氏)

そうした試行錯誤のすべては「美味しい」のため。パンの耳の量を原料全体の6〜7%に抑えたのも味を優先したからだ。最後まで飲みきってもらえてこそ食品ロス削減を象徴する商品。さらに“もう1本飲みたい“と思ってもらうことが持続可能な活動につながるとの考えだ。

「(食品ロス削減という)どんなに美しい社会道義を得ても、苦行に変わった瞬間に辛くなる。美味しい、楽しいことがさらに良いことにつながっていくと思います」(生江氏)。

記者も飲んでみたが、ローストしたパンの香ばしさが際立ち、それでいてさっぱりとクセのない日本人好みの味だと感じた。パンに含まれる塩分が味の“つなぎ役“になってくれるせいか、和食など繊細な料理にも合いそうである。

確かに“もう1本”となる美味しさだ。


※同商品は、ブリコラージュにて1本650円(税込)で販売。売り上げの1%は530weekの活動費にあてられる。今後、AJBブルワリー直営のパブ「里武士」(LIBUSHI)や全国のビアバーなどに展開予定。

bricolage bread &co.

東京都港区六本木6丁目15-1 けやき坂テラス 1F
Bakery Counter 8:00-20:00
Restaurant & Coffee Counter 8:00-21:00
定休日 毎週月曜日
Tel 03-6804-3350
いからし ひろき

プロライター。2人の女児の父であることから育児や環境問題、DEIに関心。2023年にライターの労働環境改善やサステナビリティ向上を主目的とする「きいてかく合同会社」を設立、代表を務める。