サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

花王がSBパリ参加報告―第1回SB-Jフォーラム

  • Twitter
  • Facebook
SBパリの参加報告を行う花王の大谷純子氏(右)とサステナブル・ビジネス・プロデューサーの足立直樹氏

サステナブル・ブランド(SB)国際会議の日本におけるネットワーク強化に向けた会員コミュニティ活動「SB-Japanフォーラム」の今年度第1回フォーラムが、5月22日開かれた。4月23日から25日にかけてフランスで開かれた「SBパリ」の報告として、日本から参加した花王の大谷純子ESGコミュニケーション担当部長が現地での発表内容や反応を報告。後半には組織変革に向けたワークショップが行われ、活発な意見が交わされた。(オルタナ編集部=堀理雄)

サステナビリティの主役は消費者

「ヒーローはお客様。それを助けて一緒に進めていくのが私たちブランド」と述べる花王の大谷氏

第1部では、SBパリの報告が行われた。花王の大谷氏は「まず花王というブランドを知ってもらい、グローバルでのプレゼンスを高めたいという思いで参加した」と述べた。さらにSBパリでのセッションのテーマが「イノベーションをリードするのは消費者か、それともブランドか」というものだったことに、強く惹かれたという。

同じ4月に花王が策定したESG(環境・社会・ガバナンス)戦略である「Kirei Lifestyle Plan(キレイライフスタイルプラン)」の内容が、「私たち一人ひとりのライフスタイルをサステナブルなものにしていこうという思いを込めたもの」(大谷氏)だからだ。

「サステナビリティはお客様のものか会社のものかという問いに対する私たちの答えは、『ヒーローはお客様。それを助けて一緒に進めていくのが私たちブランド』だ」と述べた。

プラスチックの削減に向けて花王が進める詰め替え容器である「らくらくecoパック」などを会場で紹介したことに触れ、大谷氏は「環境に良いこととお客様が良いと思うことのギャップなど、(欧州の企業も日本企業と)共通の悩みを持っていると感じた」と話した。

パリでの開催は、SB国際会議として今回が初めてだ。その全体の印象について、日本から参加した足立直樹 サステナブル・ビジネス・プロデューサーは「単に取り組みを報告する場ではなく、参加者がその場で一緒に何かを創っていこうというクリエイティブの場だった」と話す。

ファッションショーで使われる花道のような壇上で、パネリスト同士がフリーにディスカッションするスタイルが特徴的であり、発表者が参加者の前でプレゼンテーションするという従来のスタイルは少数派だったという。

詩やパフォーマンスといったアートの試みや、哲学的なテーマも多く盛り込まれていたことなどを紹介した上で足立氏は、「サステナビリティについて、切り口の違う新しいものが生まれつつあるのではないか」と述べた。

対話を生み出す関係性がカギ

トークセッションで発言する(前右から)SYSTEMIC CHANGE Inc.の東嗣了氏、NPO法人SALASUSUの青木健太氏、CRR Global Japanの島崎湖氏

フォーラム第2部では、「分断を乗り越えるサステナブルな組織づくりとは?」と題しトークセッションとワークショップが行われた。

組織変革に向けたコーチングを手掛けるSYSTEMIC CHANGE Inc.の東嗣了社長は冒頭、「持続可能な社会に向け、組織の外だけでなく、組織内での葛藤や対立に向き合い、組織自体を持続可能なものにしていく対話やダイアログが重要になっている」と解説した。

組織変革に向けた現場の実践として、カンボジア発のライフスタイルブランドを展開するNPO法人SALASUSUの青木健太CEO・共同代表が取り組みを紹介した。ハンドメイドのバッグやサンダルなどモノづくりを通じてカンボジアの女性の自立を支援するSALASUSUでは、託児所の設置や教育支援にも力を入れている。

青木氏は「サステナビリティに向け、社会的な取り組みと事業性のバランスをとるなかでスタッフが疲弊してしまうという問題に対し、対話や組織開発の重要性を感じた」と指摘。「なぜ自分はその事業をやりたいのか?と時間をかけて探求することが力になる」と述べた。

組織のなかで個々人の関係性にフォーカスするシステムコーチングを手掛けるCRR Global Japanの島崎湖共同代表は、「普段から関係性を整えることを意識して信頼関係をつくることで、何かあったときに声やアイディアを出し合い積極的に動き出せる可能性が高まる」という。

島崎氏は「自分が信じた選択をできるかどうかは今まで以上に問われている。それができているリーダーには、結果としてメンバーがついていっていると感じる」とコメントした。

第2部の後半では東氏と島崎氏がファシリテーターとなり、実際に組織変革を体感するために参加者を交えたワークショップが行われた。

新たな変革に積極的に飛び込む人、そうではなく従来のやり方や伝統を守る人、両者のどちらにも属さず双方をつなぐ役割を果たす人の3つのグループに分かれ、それぞれのグループの立場を体感・想像することで、対話と相互理解を生み出す試みだ。

参加者からはSDGs(持続可能な開発目標)やCSRの社内浸透といった課題を踏まえた実感のこもった意見や感想など、多くの発言があった。

今年度のSB-Jフォーラムは、来年2月に開かれるSB 2020 Yokohamaに向け全6回が開かれる予定だ。

組織変革を体感するワークショップでは、参加者から実感のこもった意見や感想が出された