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「2040年問題」自治体はプライドと連携で対応を

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公開講座「自治体は『2040年問題』にどう向き合うか?」会場の様子。18日、日本プレスセンター(東京・千代田)で

日本は少子高齢化によって2040年には深刻な若年労働者の不足が懸念されているが、総務省の研究会はこうした若年労働者不足への対策の一環として自治体に対しAIを活用した「スマート自治体への転換」などを示している。後藤・安田記念東京都市研究所は「2040年問題」をテーマに公開講座を開催し、自治体はこの問題にどう向き合うべきかを研究者らが討議した。太田昇・岡山県真庭市長は「プライドを持ち広域合併の成果を活かした連携で取り組むことが重要」と述べた。(松島 香織)

総務省の自治体戦略2040構想研究会は、「スマート自治体への転換」「公共私によるくらしの維持」「圏域マネジメントと二層制の柔軟化」「東京圏のプラットフォーム」を自治体に示し、AIやロボティクスを活用し行政システムを標準化・共通化することや圏域全体でマネジメントを支えるプラットフォームづくりを促している。

2017年から2018年まで自治体戦略2040構想研究会の座長代理、2018年からは内閣府・地方制度調査会委員を務める東京大学先端科学技術研究センターの牧原出(いづる)教授は、「人口減少に対して研究会で議論が進んでいるが、地方自治体が引き受ける局面になると大変難しい。このまま放置したら自治体に大きな負担がかかる」と警告した。

左から太田昇 真庭市長、山下祐介 首都大学東京教授、小池司朗 国立社会保障・人口問題研究所人口構造研究部部長

太田市長は「『2040年問題』の議論をもっと活発にするべき。自治体は地方分権の時に議論した精神・志を思い出して自分たちの自治体は自分たちの手で、という強いプライドを持ってほしい」と自立自尊の取り組みが必要だと力を込めた。

都市社会学、地域社会学などが専門の山下祐介・首都大学東京教授は、「中央都市対地方という取り上げ方に違和感がある。東京では23区より23区外のほうが出生率は低く、一番の問題は都市郊外にあるのではないかと考えている。市町村別の分析や郊外住宅を抱えているかどうかは議論されているのか」と疑問を呈した。

山下教授の疑問に対し、国立社会保障・人口問題研究所人口構造研究部の小池司朗部長は「特に都心の3区を中心に東京23区の人口は増加傾向にあるが、職住近接が要因のひとつだと考えられる。地価が下がり住宅を購入したり、子育てに費せる時間があるからではないか」と答えた。

一方東京の郊外で出生率が低くなっている点については「郊外の地域では人口減少が目立つ地域が出てきている。以前は男女の役割分担があったがライフスタイルの変化が要因と考えられる。共働き世帯が増え、長時間通勤で時間がなく子を産み育てるサポートも難しいのではないか」と話した。

小池部長は「人口構造は高齢化しており、少子化率が下がっても人口減少は止まらない。大学で人口学の学部を設置したり、中学・高校から人口学を学ぶなど、人口問題を普及させることが人口減少を止めるきっかけになる」と人口動態から未来社会を考える教育の重要性を訴えた。

松島 香織 (まつしま・かおり)

サステナブルブランド・ジャパン デスク 記者、編集担当。
アパレルメーカー(販売企画)、建設コンサルタント(河川事業)、
自動車メーカー(CSR部署)、精密機器メーカー(IR/広報部署)等を経て、現職。