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熊本農家ら、IT利用の鳥獣被害対策で農林水産大臣賞

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「鳥獣被害による離農ゼロ」を目指し活動する「くまもと☆農家ハンター」

熊本県内の若手農家らにより組織されたグループ「くまもと☆農家ハンター」はこのほど、環境省「生物多様性アクション大賞2018」の農林水産大臣賞を受賞した。ITも活用してイノシシを中心とした鳥獣被害対策を行っていることが評価された。同グループはIT企業と連携した試みによりICT機器を使って被害の調査や動物の捕獲を行い、ECサイトを開設してジビエ肉を販売するなど、野生動物による深刻な農作物被害の対策を地域のビジネスにつなげている。(箕輪弥生)

2019年は干支でいうとイノシシ年だが、イノシシによる深刻な農作物被害に悩む農家は少なくない。熊本県ではイノシシによる農作物被害が2.7億円(2016年度熊本県調べ)にのぼり、離農の原因ともなっている。この問題解決のため、「地域と畑は自分たちで守ろう」と地元の若手の農家約100人が集まり補助金などに頼らず2016年から活動しているのが「くまもと☆農家ハンター」(熊本県宇城市)だ。

同グループは被害の調査や動物の捕獲を行うだけでなく、楽天などECサイトでジビエ肉を販売し、問題解決から商品展開までを自らで構築している。

中でも、最も時間がかかるワナの見回りにICT(情報通信技術)を取り入れて効果をあげている。同グループはメンバーがそれぞれ本業をもっているため、業務の合間にイノシシを捕獲する箱ワナを見回るのは時間的にも負担が大きい。そこで通信機能をもった遠隔監視システムを複数導入し、負担軽減を図っている。

その仕組みのひとつがフォレストシー(東京・江東区)が開発した「オリワナシステム」だ。山間部などの携帯電波圏外エリアでも広範囲で通信を可能にする無線技術により、箱ワナにイノシシがかかるとセンサーによって監視する利用者の端末に即座に連絡が届く。

ワナをリアルタイムで監視する遠距離無線技術を使った「オリワナシステム」の仕組み

同会では、捕獲したイノシシの命を無駄にせず有効に活用するため、ジビエとして食肉として販売するほか、ペットフードとしての加工や畑の肥料など循環型の利用を進める。遠隔監視システムによりすばやく捕獲、処理できるため新鮮で高品質なジビエを流通させることにもつながるという。

同会の宮川将人代表は「これまでいつ捕獲され、調理されたかわからなかったが、このシステムを使うことでジビエのトレーサビリティが可能になる」と話す。

同会では、IT技術を使った害獣対策を他地域にも展開したいと考えており、2019年1月には産官学と住民が連携したイベント「九州☆農家ハンタージビエサミット」を開催する。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。

http://gogreen.hippy.jp/