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川崎に廃プラ由来の水素で稼働する「水素ホテル」

ホテル正面右側にエネルギーを供給する東芝製の水素燃料電池システムがある

6月に開業した「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」(東急ホテルズ)は、世界初の廃プラ由来の水素をエネルギーに活用するホテルだ。昭和電工・川崎事業所で廃プラスチックから水素を取り出してパイプラインでホテルに供給し、ホテル内の電力と給湯に使う。臨海エリアで作った水素を地域で使う地域循環型の水素活用モデルとして環境省の実証事業に採択されている。開業から2カ月経った稼働状況を現地からレポートする。(箕輪弥生)

「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」は、多摩川を挟んで羽田空港の飛行機が離発着する様子を目前に眺めることができるユニークな場所にある。

ここは川崎市が臨海部の活性化を目的に、いすゞ自動車の工場跡地を活用し、国の国際戦略総合特区として開発してきたエリア「キングスカイフロント」である。ライフサイエンス・環境分野の研究所や企業約60社を集積した特区であり、同ホテルは地域のビジネス需要も吸収する。

廃プラ由来の水素は川崎臨海部内で供給され消費される

川崎市は臨海部活性化の戦略として水素活用も打ち出しており、それに基づく具体的なプロジェクトのひとつが、同ホテルで廃プラ由来の水素をエネルギーとして活用する試みである。地域の特性を活かした低炭素な水素技術の実証実験として環境省から認定され、2015から5年間行われている。

仕組みは川崎市の臨海部で、2003年から一般ゴミのプラスチックからアンモニアを製造してきた昭和電工の技術を活用し、アンモニア製造過程で利用する水素を廃プラから抽出し、その一部を約5kmのパイプラインでホテルに供給する。

昭和電工は、東芝製の水素燃料電池システム(出力100キロワット)によって作られた電気と排熱を、ホテルの電力や給湯使用量に連動して供給している。例えば、取材前日のデータではホテル電力需要の30%をこのシステムで供給していた。地域で水素が供給され、発電時にCO2を排出しないことや、5分弱という短時間で発電を開始することができる利点がある。

昨年12月に中国が廃プラの輸入規制を打ち出すなど、使用済みプラスチックの処理が大きな問題となる中、廃プラの水素エネルギー利用は新たな活用方法として期待が高まる。

「系統の電力に比べて価格の競争力は弱いが、廃プラを使うことや、リサイクル過程や発電時の低炭素性が環境へのメリットとなる」と昭和電工・川崎事業所の高山翔太郎氏は説明する。

スタイリッシュなデザインが宿泊客以外の利用も促進する

同ホテルでは、7月から宿泊客の使用済み歯ブラシやヘアーブラシも回収して昭和電工に提供し始めた。同ホテルの荒木茂穂総支配人は「お客様も廃プラを水素に活用する実証実験に参加しているということを積極的に発信していきたい」と話す。

「The WAREHOUSE」というネーミングに表されるように、倉庫をイメージした同ホテルは米国ブルックリンやポートランドのホテルを彷彿とさせるデザインテイストであり、コワーキングスペースも充実している。多摩川脇を走るサイクリストグループの利用などもあるという。

2020年にはホテル側から羽田空港につながる橋も完成する予定で、インバウンド需要も期待される。実証実験は2020年に終わるが、両社とも国内外に発信できる環境技術として今後も継続を検討していきたい意向だ。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・マーケティングプランナー・NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「エネルギーシフトに向けて「節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.petit.cc/