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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

SB2018バンクーバーのポイント日本で紹介

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第2部の様子

6月4~7日にかけてSB2018バンクーバーが開催された。その報告会が、7月24日に大阪、25日に東京で行われ、日本から会議に参加したSB国際会議東京のプロデューサーが、会議の模様や2018年度のテーマ「グッド・ライフの再構築」について、注目すべきポイントを報告した。(オルタナ編集部=堀 理雄)

SB国際会議では毎年共通のテーマを決め、現在12カ国、13都市で開催されている。2017年からの3年間は「グッド・ライフ」をキーワードに会議が行われ、2017年度は「グッド・ライフの再定義」、2018年度は「グッド・ライフの再構築」、2019年度は「グッド・ライフの展開」と続く。

SB国際会議東京を運営する博展の鈴木 紳介・サステナブル・ブランド企画推進室長は、最も重要なフラッグシップイベントとして6月に開かれたバンクーバーでの会議には、約30カ国から2500人以上が参加し、企業やNGOなどの活発な議論や交流が行われたことを紹介。来年3月に開かれる東京会議に向け「日本ではどう考えるのか、グローバルにフィードバックしていきたい」と述べた。

企業の目的は社会にある

第1部では、SB国際会議東京の総合プロデユーサー 森 摂・オルタナ代表取締役と同アカデミックプロデューサー 青木 茂樹・駒澤大学経営学部教授から、バンクーバー会議での議論のポイントが紹介された。

森総合プロデューサー

森氏は、今回の共通テーマ「グッド・ライフの再構築」の最大テーマのひとつとして、「サステナブル・ブランドになるための5つの条件」を紹介。そのなかでも「パーパス(会社の存在意義)は利益を超える(Purpose beyond profit)」という原則の重要性を強調した。

「企業の目的は利益ではなく社会にあるという点が大事なポイント。利益は、その企業が正当であったかどうかの物差しに過ぎない。社会的使命の達成と顧客の創造は同じ領域にある」と述べた。

さらに、2019年度のSB国際会議に向けて重要となる4つの要素として「コミュニケーション」「コラボレーション」「サイエンス」「テクノロジー」を紹介。

「サイエンス」や「テクノロジー」も重視している点について森氏は、「SB国際会議では、社会的な課題の解決に向けた共同や価値観の共有のために、先進的なテクノロジーを取り入れ、製品やサービスの質を高めていくという点も考えていることを念頭において、日本でも力を入れていかなければならない」と指摘した。

青木アカデミックプロデューサー

青木教授は、「グッド・ライフの定義が、モノの豊かさより、シンプルでバランスのとれた健康で幸せな生活、価値ある人間関係などに移っていく流れがある」と述べ、米国などを中心に、消費者・生活者の側から新しい消費をつくっていこうという機運が高まっている状況を紹介。「そうしたグッド・ライフな生活を財やサービスとして提供する企業は、1社だけでそれを行おうとするのではなく多様な連携をつくっていくことが必要」と指摘した。

また、会議が開かれた都市である「バンクーバー市内には高速道路が走っていない。生活の居住性の観点でインナーシティに高速道路を作らないという選択をしたからである」と、サステナビリティを体現する街としてのバンクーバーの市民の取り組みを紹介した。

さらに青木教授は、「バンクーバーでは古い産業分類にとらわれないベンチャービジネスが盛んに起こっている。背景には多様性やサステナビリティを重視する行政の仕掛けと、それを支える市民の存在があり、共感と連携を通じて面白いことが起きている」と自身の感じたポイントの紹介を締めくくった。

「ソーシャル・コンシューマリズム」の実践例も

第2部では、バンクーバー会議で行われたセッションから、具体的な事例が紹介された。青木氏より、社会的な課題解決に向けた消費者の活動などを通じた「ソーシャル・コンシューマリズム」の取り組みの一例として「TangoTab」社が紹介された。

同社は米国で展開するレストランの予約サイト。サステナブルな視点で選ばれたレストランを検索・利用するサービスを提供し、同時に食に困る人々への寄付を行っている。

「消費者がアンバサダー(大使)となってブランドの価値観を伝えていく。ミレニアル世代はこうした企業に関心が高い人々が多い」と、新たな消費行動の機運の高まりを示した。

森氏は取り組みについて、「テクノロジーとダイナミズム、その根底にサステナビリティがある絶妙な組み合わせが重要。最近、売り上げを伸ばすだけでなく、コミュニティーを大事にしたいという企業も出てきている。そういう企業がしっかり伸びていくビジネス社会をSB国際会議としても目指していかなくてはいけない」と指摘した。

そのほか、ヒルトンホテルやマックスハンバーガーなどの企業の取り組み事例が紹介され、参加者はメモを取ったり、頷きながら、熱心に話に耳を傾けた。

会場からは「環境問題の視点で、発展途上国の行動が変わっていくことを目指した取り組みはあるか」、「自分の周りでも価格の安いものを求める人は多い。果たして消費者行動は変わるのか」、「スポーツとサステナビリティをテーマにした取り組みはあったか」など、活発な質疑応答が行われた。