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GPIF・世銀、債券のESG投資が「収益の安定に貢献」

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年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と世界銀行グループは20日、「債券投資における環境・社会・ガバナンス(ESG)の考慮」に関する共同研究の報告書を発表した。両者は世界の30の投資家や格付け機関などにインタビューを実施。債券投資先の事業をESGの観点から評価していくことが、「リスク管理の強化につながり、より安定した投資リターンに貢献し得る」と結論付けた。(オルタナ編集部=小松 遥香)

GPIFと世界銀行グループは昨年10月、持続可能な投資を促進するために提携。第一段階として、これまで研究や実践が進んでいなかった債権におけるESGについて共同研究を行っていくことを明かした。

報告書によると、債券投資の判断にESG課題を組み込むことは信用リスクを判断する上で重要であり、包括的な信用リスク分析の一部として債券投資にESGを統合すべきという実証結果が出ている。債券投資家にとってESG投資は、一般的な投資判断の決定プロセスになりつつあるという。

国際的には、社債や国際機関債を中心に債券投資へのESG課題の組み込みは急速に進んでいるが、国債や資産担保証券、私募債に関しては課題も多い。

さらには、一部の投資家において、ESGをリスク管理や投資リターンの視点から見るだけではなく、ESGとインパクト投資を統合させる動きもあるという。例えば、ポートフォリオが環境や社会における特定の事象に与えるインパクトを測定し、さらにSDGs(持続可能な開発目標)と関連付ける手法などがある。

一方で、株式投資か債券投資かを問わず、ESGの実践については課題があると指摘する。例えば、ESGの標準的な定義が確立されておらず、特に「S(社会)」についてはさまざまな見解がある。データについても新興国市場を中心に十分なものがないとし、国債を発行する政府とのエンゲージメントを推進することが難しい、信用格付けや債券指数に置いてESGが果たす役割が不明瞭、債券投資における指数の選択肢が乏しいなどの課題を挙げた。

世界銀行グループのジム・ヨン・キム総裁は、「SDGsの達成には年間約4兆ドルが必要と見込まれるが、ODAだけでは年間1400憶ドルにしかならない。目標の達成には、民間セクターや機関投資家の力が必要。ESGを投資活動へ織り込むことは、より高いリターンを確保しつつ、途上国に必要な資金を提供でき、世界の貧困削減を達成するための賢明な方法だ」としている。

小松 遥香

オルタナ編集部。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。