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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

サステナビリティをどうマーケティングに融合すべきか

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サステナブル・ブランド ジャパン セミナー レポート

博展とサステナブル・ライフ・メディア(本社:米国・サンフランシスコ)は、10月25日にマーケティングをテーマにしたセミナーを開催した。

マーケティングは企業戦略の中核を担っているが、コモディティ化する商品や伸び悩む国内市場など、成功へのシナリオが描きづらくなっている。「エシカル」から「サステナビリティ(持続可能性)」の追求へと進展し、企業ブランディングに広がっているグローバルな動きがある。今、日本企業は何をすべきなのかを、足立直樹レスポンスアビリティ代表取締役、細田琢デルフィス デジタルマーケティングセンター局長、オルタナ代表取締役・編集長の森摂が解説した。(松島香織=オルタナ編集部)

サステナブル志向は社会や市場が先行し、企業はその後を追っていると説明する森

「パーパス」とは何か?ブランド戦略上の考察  森 摂

サステナビリティとブランディングが融合しつつあることを実感している。6月に参加したサステナブル・ブランド国際会議(サンディエゴ)のテーマが「アクティベイティング・パーパス」だった。「パーパス」はバリュー、ミッション(ソサエティとコミュニティ)の起点にあるもので、ヴィジョン(あるべき姿)を目指す。

「アクティベイティング・パーパス」を「存在意義を揺り動かせ」と訳したが、何のために企業があるのか、見つめなおすことがこれから必要ではないか。

ナイキやベン&ジェリー、P&G、ザ・ボディショップなど、グローバル企業は社会性、サステナビリティを大切にしている。

どの企業にもコアバリューには創立以来のソーシャルな部分があり、コアバリューを増やすことで全体のバリューを高めることが出来る。具体的な活動は「ESG」の領域で、結果ソーシャルブランディングにつながる。

企業の社会的価値とは株価などの市場価値と社会的な価値があり、有形な価値と共に無形の価値がある。

CSR/CSV経営は3層構造からなり、1層は本業である基礎的CSRで、2層は本業とは別の社会貢献、3層は本業を通じた価値創造型CSR/CSVだ。

「アウトサイド・イン」は社会と企業をつなぐ事業戦略のひとつだ。ネスレや日産、伊藤園などはCSRとCSVを融合してサステナビリティを目指している好事例だ。

バンコクでのSB国際会議の様子を話す足立代表取締役

「グローバル企業に学ぶサステナブル・ブランディング」 足立 直樹 氏

2週間前にタイ・バンコクの「サステナブル・ブランド(SB)」国際会議に参加した。ブータンの王女が講演していたが、ブータンはGNH(国民総幸福量)という独自の指標を掲げハピネスを数値化している。幸せな国民を増やすことが国にとってのパーパスだ。

「先進企業はなぜSBに夢中なのか?」-誰の言うことを信用するか、というと海外では企業、政府、グローバル企業は信用されていない。だが、自分たちの目的をもっている企業は信用してもらえる。

「あなたの会社は信頼されていますか?」-信頼してもらうには、コンプライアンス、サステナビリティ、企業価値(社会との共通価値)、企業哲学があることが大切だ。成功するブランドは「明確なブランドを持ち」「共感を呼ぶもの」だ。サステナビリティをブランドに活かすことがカギとなる。

ハイネケンはビールを提供する会社だが、「運転するときはお酒を飲まない(When you drive ,never drink)」ことを動画で啓蒙している。もとF1レーサーのジャッキー・スチュワートが出演しているが、スチュワートは長年レースを安全に行うことに尽力してきた人物で、こういった出演者の起用で説得力が増す。

パーソナル・ケア商品を提供するダヴは、女性が肖像画を書いてもらい、その後、他人が描写し書かれた絵を比較する実験を動画で見せている。いずれも自分で説明して描いてもらった絵はネガティブなものだった。ダヴは実験を通じて、セルフエスティ―ム(自己肯定感)を高めるために商品を提供している、と発信している。

英国系金融グループのHSBCは同じ3つの写真を並べて、牛であればカバンを想像する人や神聖な動物であると考える人、おかずになると考える人など様々だと表現している。「色々な考え方に対してオープンである」とアピールしているが、視点が多くあることはチャンスでもある。成功するブランドは「明確なブランドを持ち」「共感を呼ぶもの」だ。

多くの日本企業は日本市場でコモディティの側にいる。企業哲学を持ち、実行し、伝えることが重要だ。そこで企業価値が高まる。特に日本企業で重視視するべきことは「伝えること」だ。

SBはムーブメントだと考えている。意識的に考え、利用するべきだ。企業が社会課題に対してレスポンスすれば、解決することができる。日本企業には、すでにその能力が備わっている。

ミレニアル世代には起業家が多いと解説する細田デジタルマーケティングセンター局長

「エシカルという市場の可能性」 細田 琢 氏

学生生活を「昔テニスサー(テニスサークル)、今ボラサー(ボランティアサークル)」と表現したが、ミレニアル世代(1980年代生まれ)は震災を経験して社会に対して敏感であり、若手起業家が多い。内閣府の調査でも「社会に役に立ちたい」という人が65%いる。実は停滞傾向にあるが、時代を読み解くキーワードのひとつが「エシカル」だ。

エシカルはイギリスから始まった。1989年マンチェスター大学の学生が活動を始め、1997年当時首相だったブレア氏が国際外交で「エシカル・アプローチが大事」とスピーチした。その後、エシカルトレードイニシアティブが発足し、イギリスのエシカル消費は1999年から2003年の間に6倍に伸びた。

日本では2009年に女性ファッション誌で紹介された。インターネットのキーワード検索 は2010年9月で46,000件、2016年10月時点では100万件になっている。エシカルをテーマに伊勢丹やそごうでイベントを開催したり、消費者庁に「倫理的消費」調査研究会が発足するなど広がっている。中高生への教育では「フェアトレード」や「エシカル」が題材になった。

2015年9月にデルフィスが実施したエシカル実態調査で、エシカルを「知っている」と回答したのは12.4%だったが、その中の3、4割くらいがエシカルを正しく理解していた。特に60代の女性と10代から20代の意識が高い。低いのは40代から50代のバブル期を体験した男性だった。エシカルを意識している人は、お金を使わず、すぐ出来ることを実践している。

3.11からの心境変化を考えた。ダイハツの「第3のエコカー」はヒット番付にも載った商品で、節約やエコで売れていた。だが今はさほど売り上げが伸びていない。今は社会思考より個人志向が重要視されている。給料が減っているので、身の回りで幸せを感じたいと思う傾向にあり、安価でこだわりがあり信頼できる商品、「信じられる確かなもの」を選びたいと考えているのではないか。企業はこういった消費者との関係性を考えるべきである。信じられる確かさとは企業への共感から生まれる。