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京都発スタートアップが目指す、世界に通用する昆虫食

サステナブル・ブランド ジャパン編集局
プロテインバー「BugMo Cricket Bar(バグモ・クリケット・バー)」

「昆虫で、誰も傷つかない生産システムを。世界中に」というビジョンを掲げ、今月19日から栄養が豊富なコオロギを使ったプロテインバーの販売を始めたスタートアップ「BugMo(バグモ)」が京都にある。同社を立ち上げたのは共同創業者の松居佑典さん(32)と大学生の西本楓さん(20)。「世界の依存や搾取、栄養問題を解決するために、昆虫を食材の選択肢の一つにしてもらいたい」と語る二人に話を聞いた。(サステナブル・ブランド ジャパン=橘 亜咲)

プロテインバー「BugMo Cricket Bar(バグモ・クリケット・バー)」は抹茶味とチョコレート味がある。一袋当たり53g、価格は500円だ。1袋に50匹分のコオロギ(英語でcricket)をパウダー状にしたものが入っており、原材料にハチミツやオーツ麦、クルミ、レーズン、ヒマワリ油などを使っている。食べてみると、きな粉のような香ばしさが口に広がり、食物繊維がぎっしりつまっている感じがする。人工添加物を使っていないこともあり、後味がすっきりしている。社名にもなっている「BugMo」は、「昆虫(Bug)も選択肢の一つに」という意味と「Bug Movement」の意味が込められている。

「素材にこだわりました。運動を通して、心身の充実をしたいと考える方々に食べてもらいたいです。現在は関西を中心に外資系のジムなどに営業を行っていますが、来年からは東京に販路を拡大したいです」と松居さんは話す。

コオロギの良さについて「養殖のコオロギは同じようにたんぱく質を含む牛乳や大豆と違い、ホルモン剤を使用することやホルモンバランスを乱す副作用もなく安心できる素材です。コオロギには筋肉の合成に必要な必須アミノ酸がバランスよく含まれ、亜鉛、鉄分、カルシウム、マグネシウム、ビタミンB、オメガ3も入っています。食物繊維も豊富です。それに、畜産は熱帯雨林の伐採や水や餌の消費量も多く環境負荷が高いですが、昆虫は違います。環境に優しく、資源を消費しない昆虫由来のたんぱく質をつかって、世界中の人が自分の体も未来も自分でデザインできる世の中を実現していきたいです」と説明する。

昆虫食にたどり着くまで

松居さんには食や素材にこだわる理由がある。大学4年生の時、食生活が原因で体調を崩した。それまでは活発に学生生活を送り、弁護士になろうと法律を学んでいた。しかし「身体が元気でなければ誰かのために何かすることもできない」と実感した。法律を学ぶ意義をなくした松居さんは、最終的に大学中退を選んだ。食生活を見直す1年の間に、食や農業、環境について調べ、ニュージーランドの大学で環境科学を学ぶことを決めた。

日本に帰国後、「日本人として世界に誇れる仕事をしたい」との思いから環境技術に取り組む国内電機メーカーで働いた。しかし、食や農業に携わる仕事をしたいと言う思いが強くなり、関西の農業ベンチャーに転職。その後、自分で何かできないかと考える中でカンボジアを訪れ、BugMo設立のきっかけになる体験をする。

松居さんは当初、現地に雇用を生み、昆虫を養殖魚の餌に使えないかと考えていた。そんな矢先、カンボジアで強盗に襲われて無一文になってしまう。しかし現地の人に助けられる。家に泊めさせてもらい、ご飯まで出してもらった。何も持っていない日本人に、家主はごちそうの魚や市場に持っていけば高値で売れるアリを食べさせてくれた。

「すごく美味しかったし、嬉しかった。昆虫を食べる文化が周りにあるというのは良いことだなと思いました」と松居さんは振り返る。それから、松居さんは京都の自宅で昆虫を養殖し、家で昆虫食を作っては友達に食べてもらうことを繰り返した。

そんな中、同じく昆虫食に可能性を見出している西本さんを友人から紹介される。2017年9月のことだ。神戸大学で学ぶ西本さんは大学1年生の夏、ウガンダに1ヶ月のホームステイをした。その際、現地の小学校を訪問し、子どもたちが食べる給食の質素さに驚いたという。医療を簡単に受けられない同国では食で健康な体を作ることが重要だーー。そう考えた西本さんは小学校で食育を教え、給食メニューを改善することを決めた。

西本さんは半年後、再びウガンダに戻り、同じ小学校の給食の職員として働くことにした。食育指導と給食のメニュー改善を行ったものの、壁にぶつかった。栄養バランスの良い食事の大切さを説明しても、経済的に実行に移すことが難しいことを痛感した。「途上国でも子どもたちに足りない栄養やたんぱく質を補える食の仕組みないか」と考えた。そして、子どもの頃から昆虫が好きだった西本さんはコオロギの可能性に目をつけた。

後に共同創業者となる西本さんとの出会いについて、松居さんは「昆虫食をゲテモノとして捉えるのではなく、その先に見る景色が近いことが創業のきっかけになりました」と振り返る。それから8カ月が経つ今年5月、松居さんと西本さんは株式会社BugMoを立ち上げた。その間、プロテインバーは幾度となく改良し続けてきた。さらには今年4月末から6月初めまでクラウドファンディングを行い、約150万円を集めた。

海外進出への足掛かりをつくる

タイのコオロギ農家で

現在、販売されているプロテインバー「BugMo Cricket Bar」はタイで養殖されたコオロギを使い、同国で製造されている。日本で製造する準備をしていたが、今年、西日本を襲った豪雨災害により国内での製造が延期となった。「地産地消をしていきたい。国内での製造の目処が立てば、国内で製造する。タイの企業にも最初からそう話をして理解してもらっている」と松居さんは言う。

同社は現在、滋賀県に国内で初めてとなる食用コオロギを養殖するパイロットファームも構え、国内での製造に向けて着々と準備をしている。パイロットファームでは3万匹のコオロギを養殖しているそうだ。

「来年には、アフリカのマーケットに進出する足掛かりをつくりたいです。現地に仕事をつくり、経済をまわして行きたいです」と松居さんは話す。西本さんも「ウガンダで見たように『食』で人生が制限されるのではなく、みんなが『食』を通して自由になれる社会にしたいです。そのために、アフリカの他にも東南アジアに提携農場を広げたいです。そうすることで、現地のマーケットでも昆虫が流通し、栄養がある食材が簡単に手に入るようになります」と説明した。

現状について、松居さんは「やりたいと考えていることと手がけていることのリソースがまだ釣り合っていません。資金も人も技術も課題があります。創業者として、関わってくれている人達を幸せにできるようこれからも挑戦していきたいです」と力強く語った。

西本さんは「提携農場を広げるには、まず日本での需要をしっかりつくる必要があります。現在販売しているプロテインバーという比較的ニッチな商品でなく、一般の人も気軽に食べられるようなヘルシースナックなどをつくり『おいしい』昆虫商品を展開していきます。そのために、提携農場で働く人や科学者、シェフなどと協力して、自分たちだけでやろうとするのではなくBugMoの輪をさらに広げていきます」と話す。

「最終的には、途上国や先進国に関わらず、BugMoで昆虫を『おいしく』食べる文化ができて、みなさんが『食』を通して人生を楽しめる社会にしていきたいです。昆虫がもともと好きなので、虫が食料問題を解決するヒーローのような位置付けになったらいいなと個人的には思っています」と語った。

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