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アリババ会長「社会問題の解決が会社を大きくする」

中国の電子商取引最大手「アリババ集団」の馬雲(ジャック・マー)会長は4月25日、東京都内の早稲田大学で行われた学生起業家らとの対談に登壇した。IoTの力で食糧安全保障問題に取り組む起業家らに「会社を大きくしたいなら、社会にあるより大きな問題を解決することだ」と語ったほか、自身の哲学を踏まえながら、AI・IoT技術が発達する時代に人類はどうあるべきかなどを集まった1000人の学生に語り掛けた。(オルタナ編集部=小松遥香)

対談相手として登壇したのは、いずれも早稲田大学に所属する起業家。データセキュリティ事業を手掛けるイーグリス(東京・渋谷)の今林広樹CEO、持続可能な食糧システムの構築を目指し、「コオロギ」の大量生産技術と食品の開発を進めるエコロギー(東京・新宿)創業者の葦苅晟矢氏、同大学准教授でコンピューターを介して身体動作の経験をシェアする「BodySharing」を研究し、米タイム誌の「世界の発明50」にも選ばれたH2L, Inc.(東京・江東)創業者の玉城絵美氏の3人。

かつて中国・杭州電子工業大学で英語を教えていた馬会長は、教育を重んじ、自らを「CEO(Chief Education Officer:最高教育責任者)」と名乗る。カジュアルな装いで、登場した馬会長。時価総額世界8位の企業の会長でありながらも、学生と同じ目線に立ち、笑いを交えながら率直に話す姿に、時折大きな拍手が沸くなど対談は盛り上がりを見せた。

起業家にはLQ(愛の知能指数)も必要

起業家に必要なものはIQ(知能指数)とEQ(心の知能指数)、LQ(Love Quotient:愛の知能指数)です。LQがなければどんなに成功しても、尊敬もされないし、愛すべき人にもなれません。

起業家は、人とは異なるビジョンを持つことが必要です。他の人と同じことをしても勝てません。違うから勝てるのです。そのためには情熱が必要です。

アリババは19年目を迎えます。毎年、毎月、毎日、いつも自分たちが正しいことをやっているのか。これは仕事と言えるのか。本当にそんなことが実現できるのかーー。そう絶えず問い続けてきました。起業家は、自分がやることに確固たる信念を持っていなければなりません。

自分なりの方法でしかできないことをできると思うからこそ、自信を持てるのです。人と違うことが起業家なのです。それでこそ、人に信じてもらう説得力が増すのです。

最初から、世界中の人を説得することは難しいものです。まずは自分のチームの人を説得し、同じビジョンを共有する人たちを引っ張って行ってください。初めから、人と意見が合わなくても心配することはありません。時間と努力が証明してくれます。ビジョンそのものが証明してくれるのです。

長期的なビジョンを実現するには

ビジネスを成功させるための鉄則です。明日すぐに結果が出るとは思わないことです。明日あるいは明後日に勝てるほど、世の中はそんなに甘くありません。

5年そして10年後を見越して、自分が心底コミットできることに力を注ぐべきです。人に反対されようが賛成されようが、好かれようが嫌われようが、それを良くすることにコミットすべきです。

企業のリーダーとして、チームの人を信頼したいなら、まずは自分自身がチームの人たちに信頼してもらうことが重要です。

そして、自分が信頼できる人でチームを組むことです。有言実行の人、裏表のない人を信頼し、チームに入れることです。意見が違えども、信頼してもらうためには、良い時も悪い時も、率直に話さなければいけません。隠しごとはいけません。信頼につながりません。

それから、みんなが落ち込んでいるときにはいい話をする。浮かれているときには、釘をさします。

人からの信頼は短期的には得られません。

創業期のメンバーは、私と同じゴールとターゲット、ビジョンを持ち、一心同体でした。そこに信頼を寄せてくれれば、引っ張っていくことは難しくありません。愛されなくても、忠誠心がなくてもいいのです。

みんなには「一緒に戦うものを愛し、それを信じ、それに懸けてくれ」と言いました。最初からは難しいかもしれませんが、長いことやっているとその方がやりやすいとみんなが言います。

ビジネスは楽しいものです。人との付き合いそのものですから。

起業家なら、少なくとも30%の時間や労力を「人」にあてなければなりません。一緒に働く人たちの言葉によく耳を傾けてください。

長期的なビジョンを掲げ、そのために動き続けるには、毎週、毎日、毎時、毎分のようにしっかり語り続け、従業員も自分と同じ考えを持つようにすることです。ミッションとビジョンをきちんと共有することです。

大きな問題の解決が、会社を大きくする

会社を大きくしたいと思うなら、世界にあるより大きな問題を解決することです。大きな会社は責任も大きいです。時価総額が大きいという意味ではなく、責任そのものが大きい。それが大きな会社であるということです。

誰しもが起業家になれるわけではありません。アイデアがあるからといって、起業家になれるわけではありません。しかしチームに属し、アイデアを持っている人と一緒に働き、経験を得ることはできます。

ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグのように大学を中退するという考えは持たないでください。退学して成功する人は少ないです。

100人の起業家のうち、95人は失敗します。その5人の起業家のうち、本当に成功して残るのは1人です。それは運があり、チームが優れているから、1人だけ残ることができるのです。

起業家であれば、チームに加わってくれた人に対して責任を果たさなければなりません。そのチームで何のために働き、何のために戦うのかというと、お金のためではありません。人生の経験のためです。世の中に変化を生み、人の生活を良くし、自分たちの生活を良くするために戦うのです。

起業家になることは素晴らしいものです。しかし簡単なことではなく、厳しいことが多いです。

学生のみなさんに伝えたいのは、挑戦することです。挑戦することは、コストがかかることではありません。でも始めたことを簡単に諦めてはいけません。やり続けてください。

外の世界を知る時代から、次の100年は「自分を知る時代」へ

人間には2つの目的があります。Happiness(幸福)とHealth(健康)です。何をするにしてもこの2つの目的があります。この世界に生まれたのは、幸せにそして健康に生きるためだと思います。

次の30年で人類は大きな変化を経験するでしょう。ガンやALSも問題ではなくなるかもしれません。寿命も延びます。これはデータテクノロジーのおかげです。

AIやロボットは、人間よりもスマートです。しかし、人間には「賢さ」があります。機械は、人間よりも上手くできることをさらに発展させていきます。一方、人は人として、人にしかできないことをますます磨いていくことになるでしょう。

確かなことは、これまでの200年間、人類は外の世界を知ろうとしてきました。しかし次の100年は、自分自身をもっと知ることになるだろうということです。データテクノロジーを使って、自らを知るということになると思います。

ですから、ヘルステクノロジーには大きな未来があります。人を健康にし、幸せにすることができます。アリババのヘルステクノロジー部門「アリヘルス(阿里健康)」が目指しているのもそこです。

AI時代を人類はどう生きるべきか

データテクノロジーの発展によって、今後30年間で世界は大きく変わるでしょう。多くの仕事はなくなるでしょう。ただ、新しい仕事もたくさん生まれるでしょう。

しかし今のままでは、新たに求められる仕事に、人間が対応できないかもしれません。ですから、教育を変えなければなりません。このままでは、世界中の大学が大きな壁に突き当たるでしょう。

教育制度は変わらなければなりません。例えば、子どもの教育について考えてみてください。機械学習の方が計算もできるし、落ち込むこともないでしょう。いつもハッピーで、いつもスマートで、疲れることもありません。子どもが追いつくことはできないでしょう。

したがって、子どもの学校教育において重要なことは、いかに機械と違うことを学ぶかということです。そして将来の仕事に就くための技能を学ぶことです。

教育は私の関心事です。私は中国で、中学校と高校を運営しています。

子どもたちをもっとクリエイティブで、建設的で、イノベイティブな人、つまり「ハートのある人」に育てたいと思っています。ダンスをし、スポーツをし、創造力を培う教育を行っています。クリエイティブで賢明な知恵というのは「ハート」から生まれます。機械には、チップがあってもハートはありません。

ですから、心配しないでください。人間ができることは沢山あります。しかしそのために、教育を抜本的に見直す必要があります。教育改革に注力すべきです。早く教育改革に着手した国の方が、さらに先に進めるでしょう。乗り遅れれば、問題が起きることは確かです。

21世紀は女性がますます重要になる

21世紀は女性がますます重要になり、男性よりも活躍するでしょう。これは良いことです。アリババの成長の秘訣は、社員の47%が女性だということです。

どの国でもどの会社でも、その会社を優れた会社にするためにはもっと女性を雇用してください。女性はユーザーフレンドリーで、ますます重要な存在になります。

企業はどう信頼を回復するのか

信頼というのは、決して短期間で得られるものではありません。信頼はずっと保証されるものではなく、なくしては回復するものです。

信頼を得るために、決して諦めないことが大事です。会社がお客さんから信頼を失う場合でも、友人やパートナーから信頼を失う場合でも、決して諦めてはいけません。

誰でも過ちは犯します。私も同じです。アリババでもこの19年、色々な問題がありました。あまりにも多くの過ちがあり、自信を喪失することもありました。

しかしこれから100年先まで事業を継続していくということは、信頼を回復してはまた失うということの繰り返しです。

ですから、起業家として、私は常に信頼と尊敬を得るように努めています。色々なステークホルダー、お客様、株主、従業員、パートナー、メディアからいかに信頼を得るかを考えることがCEOの仕事です。

幸か不幸か、今は、互いに信用をしない時代になっています。通商摩擦も起きています。あまりにも多くの問題が山積していますが、決して諦めてはいけません。信頼は、積み重ねて得られるものなのです。

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小松遥香(こまつ・はるか)

株式会社オルタナ オルタナ編集部 
アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。サステナブル・ブランド ジャパン(SB-J)担当。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。

「オルタナ」は2007年に創刊したソーシャル・イノベーション・マガジン。主な取材対象は、企業の環境・CSR/CSV活動、第一次産業、自然エネルギー、ESG(環境・社会・ガバナンス)領域、ダイバーシティ、障がい者雇用、LGBTなど。編集長は森 摂(元日本経済新聞ロサンゼルス支局長)。季刊誌を全国の書店で発売するほか、オルタナ・オンライン、オルタナS(若者とソーシャルを結ぶウェブサイト)、CSRtoday(CSR担当者向けCSRサイト)などのウェブサイトを運営。サステナブル・ブランドジャパンのコンテンツ制作を行う。このほかCSR部員塾、CSR検定を運営。