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ミレニアル世代とZ世代、社会・環境への関心高まる

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自分のことを約41%が「人間」、約20%が「世界人」と捉えているミレニアル世代。国、宗教、人種を超えた「地球市民」という考え方をしている。“Alternative Spring Break 2017” by Virginia State Parks used under CC BY 2.0

世界の「ミレニアル世代」「Z世代」と呼ばれる若者たちが気候変動や社会課題に一段と大きな関心を寄せている。世界経済フォーラムの調査によると、「ミレニアル世代」の約50%が世界規模の問題の中で「気候変動」が最も深刻だと考えていることがわかった。また米国では、ミレニアル世代より若い「Z世代」の87%が、社会や環境問題に関心があることが明らかになっている。各種調査機関の調査内容を見ると、政治や企業活動について、これら世代の志向を注視することの必要性が指摘されている。(クローディアー真理・寺町幸枝)

「気候変動」を最も憂慮

若者が最も懸念を示す気候変動の影響で生息地を追われる北極グマ。地球温暖化の被害を受ける動物のシンボル的存在だ
“Polar Bears on Thin Ice” by Christopher Michel used under CC BY 2.0

世界経済フォーラムの年度調査「グローバル・シェイパーズ・アニュアル・サーベイ2017」は、186カ国約3万1500人のミレニアル世代(18-35歳)を対象に3月末から6月末まで行われた。テクノロジー、経済、価値観、職業、ガバナンスについての若い世代の意見を集め、分析している。「世界全体に影響している最も深刻な問題は何か」の質問に対し、最も多い約49%が「気候変動/環境破壊」と回答した。気候変動は、人間活動が原因であるという科学者の見解に同意するミレニアル世代は90%を超える。

自国の問題として気候変動を捉えているのは、オセアニアの国々のミレニアル世代で、その約63%を占めている。特にオーストラリア、ニュージーランドでは、毎日生活する中で気候変動を感じ、自らの将来や身近な環境に大きな影響が及んでいることを実感しており、真剣に考える傾向がある。

SDGs達成に積極的な行動も

ミレニアル世代が国の潜在能力になると見込む難民。調査対象の30%近くが、自宅に難民を迎えても良いと考えている。“Uganda-11” by Stephen Luke used under CC BY 2.0

ミレニアル世代は勤勉さに欠けるという評価もあるが、今回の調査では気候変動に対し、前向きに取り組む姿勢がうかがわれる。「環境保護のためなら、進んでライフスタイルを変えるか」という質問に、80%近くが「変える」と答えている。

持続可能な開発目標(SDGs)の達成に取り組んでいるというミレニアル世代の若者も約82%に上る。うち、約27%が直接的に、約55%が間接的に、SDGs達成のための活動を行っているそうだ。

気候変動に続き、「世界全体に影響している最も深刻な問題」には、約40%が規模の大きな紛争/戦争を、約30%が収入や偏見などの不平等を挙げている。

気候変動同様、近年深刻化しているのが、難民問題だ。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、2016年末時点で紛争、暴力、迫害により強制移動を強いられた人は世界で約6560万人おり、過去最多を記録。うち難民は約2250万人に上る。この事態に、調査対象のミレニアル世代の約73%が、自国への難民受け入れを歓迎するとしている。

調査ではミレニアル世代の若者のうち約55%が国内の労働力に難民を加える努力をすべきだと考えている。特に北米では、80%以上が自身の在住エリアに難民を受け入れることに前向きだと回答している。日常的に異文化に接する心づもりがあることを示しており、トランプ米政権の移民政策と対照的な結果となった。

世界経済フォーラムのクラウス・シュワブ最高責任者は、調査書の序章で、「各国の首脳は、さまざまな決断を下す際に、この調査に寄せられた意見のような、ミレニアル世代の考えを取り込むようにすることが大切だ」と述べている。

「Z世代」は98%が環境に懸念

調査したZ世代の94%が企業は社会的・環境的課題に取り組むべきだと答えている
“Polar Bears on Thin Ice” by Christopher Michel used under CC BY 2.0

一方、米コーン・コミュニケーションズがZ世代(13-19歳)の男女1000人に対して行ったCSRに関する動向調査では、社会や環境問題に関心があると答えた若者は87%にのぼった。この数字はミレニアル世代を上回り、年齢が若いほど社会・環境問題への関心が高いことが浮き彫りになった。結果については3%前後の誤差に対して、95%の精査率を誇る。同社は20年以上にわたりトレンドや消費者動向などの調査を手掛けており、大手企業の商品戦略などに活用されている。

「Z世代がスマートフォンを肌身離さない世代だとはいえ、実世界の問題を無視しているわけではない」と調査に当たったコーン・コミュニケーションズの執行副社長のアリソン・ダシルバ氏は語る。「この世代は実世界の課題に関心があり、実際のエンゲージメントを求める。そしてよりポジティブな変化の潮流をつくり出す企業を、支援したいと望んでいる」と続けた。

早期から「リサイクル」や「ダイバーシティ」といった教育を受けて育っているため、社会的な関心が非常に強い世代であるZ世代。98%が、地球の健康状態を懸念しており、94%の人がこうした深刻な問題に、企業が積極的に取り組むべきだと考えている。

ダシルバ氏は「この世代では社会的なコンテンツが口コミにより拡散される傾向がある。オンラインの口コミが他人を巻き込み、影響を与えると切実に信じられている。企業はショートムービーやサンプルなどの、CSRのメッセージを共有するコンテンツとツールを提供することで、彼らの生み出す流れに深く入り込むことができる」と、情報拡散の手段としてソーシャルメディアが重要な役割を担っていることを分析した。

クローディアー真理
ニュージーランド在住ジャーナリスト。環境、ソーシャル・ビジネス/イノベーションや起業を含めたビジネス、教育、テクノロジー、ボランティア、先住民マオリ、LGBTなどが得意かつ主な執筆分野。日本では約8年間にわたり、編集者として多くの海外取材をこなす。1998年にニュージーランドに移住。以後、地元日本語誌2誌の編集・制作などの職務を経て、現在に至る。Global Press所属。

寺町 幸枝
Funtrapの名で、2005年よりロサンゼルスにて取材執筆やコーディネート活動をした後2013年に帰国。現在国内はもとより、米国、台湾についての情報を発信中。昨年より蔦屋書店のT-SITE LIFESTYLE MAGAZINEをはじめ、カルチャー媒体で定期出稿している。またオルタナ本誌では、創刊号以来主に「世界のソーシャルビジネス」の米国編の執筆を担当。得意分野は主にソーシャルビジネス、ファッション、食文化、カルチャー全般。慶應義塾大学卒。Global Press理事。

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