第36回:令和の時代に注目される新型サービスプロフィットチェーン
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4月から働き方改革関連法が施行され、勇み足、ともすれば突貫工事になりがちな企業も散見されています。そのなかで、当方の周辺では、「サービスプロフィットチェーン」に再注目する傾向が目立っています。
サービスプロフィットチェーンといえば、ハーバード・ビジネススクールのへスケット教授、サッサー教授らが1994年に提唱した概念で、従業員満足(Employee satisfaction, ES)、顧客満足(Customer satisfaction, CS)と企業の発展の因果関係を示したフレームワークのことです。
ただ、かつてのサービスプロフィットチェーンの捉え方と大きく違う点があります。それは、そもそもの起点がアウトサイドインであるということです。
人口動態、環境変容、テクノロジー革命などの社会の変化や課題を起点に描くサービスプロフィットチェーンですから、当然、変化に適応し、課題を解決する、サステナブルな因果関係を構築することが必要です。したがって、サービスプロフィットチェーンの顧客満足(Customer satisfaction, CS)は社会満足(Social satisfaction, SS)となります。
もし、従業員満足(Employee satisfaction, ES)として、福利厚生や従業員への優遇を講じるのに留まっていたら、どうでしょうか。単に居心地のいい、ぬるま湯のような組織になりかねません。
社会満足(Social satisfaction, SS)と因果関係があるのですから、肝要なのは、従業員の意気揚々としたやる気を引き出し、モチベーションを上げ、仕事の質や社会への寄与、パフォーマンス向上を通し、「企業の発展を図る」のです。
従業員満足(Employee satisfaction, ES)の構成要素である従業員の働きがいと自分事意識、そしてそれを育む組織風土が、従業員の社会への創意と誠実さを育み、一方で、従業員の意識向上と具体行動が進むことでソリューション力が高まり、社会満足(Social satisfaction,SS)を向上させます。
それが社会的意義や優位を生み出し、企業文化を、ともすれば業績を向上させ、それによって得たプロフィットを基に、働きがいの維持・強化、人材育成やシステム・内部サービスの仕組みを拡充させることができるという循環です。
つまりやるべきことは、法案に準じた施策や制度の導入ではないのです。従業員の働きがいと自分事意識、そしてそれを育む組織風土の構築なのです。それも、アウトサイドインですから、自社の経験や実績などは、二の次三の次、もはや無関係といってもいいかもしれません。
皆さん、自社の周辺には、どんな変化や問題があるでしょうか。それらを起点に事業展開せずには、もはや生き残れないのです。