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CSRブランディング最前線

第26回:「組織の上に立つ人」に捧ぐ――サーバント・リーダーシップ

SB-J コラムニスト・細田 悦弘

~ ビジネスと社会課題解決を両立させ、‘らしさ’で競争優位を創り出す!待望の戦略メソッド ~

企業の利益至上主義、大学スポーツの勝利至上主義にも、社会の大きな関心が集まっています。「組織の上に立つ人」にとって、時代にふさわしいリーダー像が問われています。そこに、「サーバント・リーダーシップ」の考え方が大きな威力を発揮します。

従来型のリーダーと「サーバント・リーダー」

企業でも大学でも病院でも、「今どき、そんなことをやってるんだ!?」「今どき、そんなこともやってないんだ!?」と、社会からの厳しい目線が向けられる残念な出来事が散見されます。そこには、現代社会の価値観や美意識との齟齬があります。

とかく従来型のリーダーは、まず相手の上に立って相手を動かそうとします。組織の階段を上り詰めていくと、「おれは偉い」と勘違いする人がしばしば出てきます。そういう人がリーダーシップの名を借りて、倫理観のない決定をすることになりがちです。地位や権限の威力で相手がついてくるだけなら、そこに真のリーダーシップは存在しません。一方、サーバント・リーダーは、 他者に対する思いやりの気持ち・奉仕の行動 がつねに最初にきます。

リーダーシップのカギは、「その人を信じられるかどうか」ということでしょう。信頼できる人なら、人はついていく。では、どういう人であれば信頼してついていくかというと、自分たちのためを思ってくれる人。リーダーが自分たちに尽くしてくれる、奉仕してくれると感じられるときに、フォロワー(自分についてくる人)として心の底からリーダーを信頼してついていきます。


「サーバント・リーダーシップ」とは、1970年に、元AT&T(アメリカ電話電信会社)ロバート・K・グリーンリーフ博士が提唱した、あるべきリーダー像です。グリーンリーフは、サーバントを「尽くす人」「奉仕する人」として捉え、まわりの人々に、「サーバント」として接することがリーダーの基本姿勢だとしています。最初に尽くしたい(奉仕したい)という自然な感情に始まる。まずはそれを実践し、その後でリーダーとしての役割も果たさなければならない、と考えるのが「サーバント・リーダーシップ」です。

「尽くすこと」と「リーダーシップ」

「リーダー」が目指すのは、夢やミッション・ビジョンの実現です。リーダーは、自分が達成すべきことや夢に対して強い使命感を持ち、それを実現するために、自らの意志でサーバントに徹します。実現を望む社会的なミッションを奉仕の名のもとに掲げ、自分についてくる人(フォロワー)たちに尽くす。それが、サーバント・リーダーの姿です。

サーバント・リーダーは、つねに他者がいちばん必要としているものを提供しようと努めます。他者に奉仕することで、相手がより健全に、賢く、自由に、自律的になり、自己中心的な欲望に執らわれない真の奉仕者として成長していきます。優れたリーダーは、組織のゴールを実現するために、メンバーが行動しやすいようにサーバントとして奉仕する人です。

病院も大学も、サーバント・リーダーシップ

尽くすこととリーダーシップをとることにつながりがあるのは、医師や教職員も同様です。

よい医師は、目の前に病気で苦しんでいる人がいたら「自分が持っている医学の力で助けたい」と自然に思い、その後で、「こういうことをしてはいけない」「こういうことをしなさい」と患者をリードするでしょう。

よい教職員も、向学心に燃えている子どもたちには、「自分のすべてをかけて教えてあげたい」と思い、同時に「心ある社会人に育つように」リードしていくはずです。

病院は医師のためではなく、患者のためにあります。大学は教職員本位に存在しているわけがなく、研究と学生の教育をするためにあります。

多くの私立大学が、伝統的に、大学の法人は理事長、教学は学長がトップというダブルスタンダードの機構となっていますが、「学生本位」「社会本位」を軸とした体制再構築の時代が到来しているのではないでしょうか。

サーバント・リーダーシップで、理念・ミッションを実現する

企業社会においては、リーダーは組織やチームをぐいぐい引っ張る人だと思われがちだが、サーバント・リーダーは、力ずくではなく、ミッションに向かって自発的に歩み始める人を後押しします。サーバント・リーダーシップを発揮して会社組織を動かすには、まずは自社の存在意義であるミッション、ビジョンを明確に持ち、それを組織のメンバーたちに伝えることが不可欠です。

社内でのミッション・ビジョンの共有が、サーバント・リーダーシップの実践の前提です。理念やミッション・ビジョンはトップダウンのかたちをとりますが、丁寧に社内で共有(インターナルブランディング)し、実践においては現場の仕事が円滑に運営できるように、サーバントとして社員たちを支える存在であることが望まれます。

企業の第一の目的は、唯一の動機である利益の追求だけではなく、「社会を幸せにする」「社会を豊かにする」ことです。今こそ「初心に返るとき」だという気運があります。企業にとっては、それは「創業の精神」です。多くの有力企業では、そこに社会的大義が込められています。

その実現のために、時代の価値観をとらえた社会的使命を見出し、自社の「得意技や個性」(らしさ)を発揮して、他社にはできない自社ならではの価値を生み出します。この文脈が、時代が求める競争優位をもたらします。

社会の役に立ちたいという理念やミッションを、時代にふさわしいかたちで「自社らしく」実現する。そこに「CSRブランディング」の真髄があります。

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細田 悦弘
細田 悦弘 (ほそだ・えつひろ)

中央大学大学院 戦略経営研究科 フェロー / 一般社団法人日本能率協会 主任講師

1982年 キヤノンマーケティングジャパン(株)入社後、営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、同社・CSR本部に所属しながら、企業や大学等での講演・研修講師・コンサル・アドバイザーとしても活躍中。CSR・ブランディング・コミュニケーション分野において、豊富な経験を持ち、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。

中央大学ビジネススクール 戦略経営アカデミー講師、一般社団法人日本能率協会 主任講師、一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、経営品質協議会認定セルフアセッサー、 Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト。社内外のブランド・CSRのセミナー講師の実績多数。

◎専門分野:CSR、ブランディング、コミュニケーション、メディア史
◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~ ) など。

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